3Dプリンタはなんでも作れる便利なツールですが、一度に造形できるサイズには制限があります。
私の購入した「BambuLab P1S AMS」は250×250×250mmのサイズまでが造形可能となります。
結構大きいのですが、それでもバイクのパーツになるとなかなかサイズには収まりきらなくなる場合があります。

このため、大きな部品を作る場合は、部品を分割して製作し、後からつなげる必要があります。しかし、単に部品をつなげるだけでは強度や耐久性に問題が生じることがあります。
特にバイクや機械部品のように高い強度が要求される場面では、接合方法によって仕上がりや性能が大きく変わります。強度だけでなく振動により破損したり外れたりする場合もあるため接合方法はかなり重要になってきます。

そこで今回は、3つの接合方法を比較しながら、特に「リベット接合」についてフォーカスしていきたいと思います。

3Dプリンタ造形物の接合方法種類の比較

先ほどご紹介したように今回はリベット接合を使用しますが、その他にも部品を接合する方法には様々な接合方法が考えられます。それぞれの方法の特徴を以下で詳しく見ていきましょう。

1. 接着剤で固定する方法

接着剤を使用する方法は、手軽で汎用性が高く、多くの場面で利用される基本的な方法です。接着剤自体も近くのホームセンターで売られているため誰でも入手が簡単なものになります。

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接着剤で接合する場合も以下のようなメリットとデメリットがあります。

メリット

作業が楽:人生で誰でも一度は使ったことがあると思いますがとにかく作業が楽で誰でも簡単に接着することができます。

入手性が良い:みんな大好きホームセンターで簡単に手に入れることができます。ただしホームセンターで手に入れることができるのは一般的な家庭用の接着剤になります。

デメリット

種類が豊富:ホームセンターやネットを検索してみるとわかると思いますがとにかく接着剤の種類が豊富です。種類がありすぎてどれを選択して良いのかがわからなくなってきます。

強度差が大きい:接着剤や材質の種類によっては合う合わないがあるため強度差がかなり激しく出ます。

長期使用に向かない:経年によって強度低下が懸念されます。ただ、DIYで使用するような3Dプリンタの製品にしようする程度であれば全然問題ないと思います。

これらの理由から、個人が入手できるような接着での固定は簡易的な接合に向いている方法かなと感じます。
もちろん、工業用で使用しているものの中には機械や自動車で実績のあるものも十分にありますので、あくまでも家庭用での話となります。

2. 熱で溶かして接着する方法(熱カシメ)

熱で樹脂を溶かして部品同士を接合する方法は、3Dプリンタの積層原理と同じ考え方を応用しています。この方法では、接合面を熱で溶かし、部品を一体化させます。以下の特徴があります。

一般的に樹脂ステーキングと呼ばれる手法になります。

樹脂ステーキングとは?
リベット結合を樹脂部品の形状をリベットの様にして熱で溶かして固定する方法になります。

メリット

強度が高い:樹脂が一体化するため、接着剤よりはるかに高い強度が得られる。

デメリット

見栄えが汚い:手作業で行うため、接合部分が粗くなりやすく、見栄えが汚くていかにも素人感が出てしまう。

難易度が高い:熟練度が必要なため、初心者にはやや難しい方法です。

熱カシメはあまり個人で行うには向いていませんが、樹脂以外の材料を使用しないため、コストパフォーマンスは優れています。

3. ボルトで締結する方法

ボルトを使用する方法では、金属製のインサートナットを造形物に埋め込み、そこにボルトをねじ込んで部品を固定します。この方法は、3Dプリンタ界隈や一般的な樹脂成型を行っているところでは広く用いられており、次のようなメリットがあります。

メリット

高い締結力を得られる:樹脂製の造形物だけではねじ山が破損しやすいですが、インサートナットを使用することで、金属製のねじ山を持つ構造を実現できます。これにより、高い締結力と耐久性を確保できます。

デメリット

強度がそこまで強くない:いくらインサートナットを埋め込んでいるとはいえ、樹脂の部品を熱で溶かしてインザーとナットを埋め込んでいるため実際のタップのような強度は得られることができません。

特殊工具が必要:インサートナットやはんだごてといった特殊な工具が必要になります。

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設計段階でインサートナットの埋め込みを考慮しておけば結構楽な手法になります。インサートナットやはんだごてといった通常使わない工具や材料が必要ですが、3 Dプリンタを使用する上で習得はしておきたい接合方法になります。

インサートナットについては以下の記事を参考にしてください。

4. リベットで固定する方法

リベットを使用する方法は、金属部品でも一般的に使用されており、特に高い強度が要求される場面に適しています。この方法の特徴は以下の通りです。

メリット

熱を使わない接合:熱による変形を気にせず作業ができるため、樹脂部品に適しています。

優れた強度金属製のリベットを使用することで、接合部分の強度を大幅に向上させることができます。

見た目が美しい:専用工具を使用することで、接合部分を綺麗に仕上げることが可能になります。個人的にはこのメカメカしさがとても大好きです。

デメリット

特殊工具が必要:何と言ってもリベッターが必要なため特殊な工具が必要になります。

板厚に限界がある:もともと板金部品の結合に使用されている方法のため、一般的には薄板のみの結合となります。リベットの長さにもよるのですが、一般的には3ミリまでが結合限界となります。

リベットを使用することで、これまで諦めていた大物の部品や負荷のかかる部品の製作が可能になります。

リベット接続方法の検証

冒頭にお話ししましたが今回はこの4つ目の結合方法のリベット接続について検証を行っていきます。

今回、このリベット接続を検証する背景には、バイク部品の製作における課題があります。バイクのような大きな部品を製作する際、3Dプリンタだけではサイズの制限があり、従来の接合方法では強度が不足していました。しかし、リベットを活用することで、部品同士を強固に固定し、振動や衝撃にも耐える部品の製作が可能になるのではないかと考えました。

リベット接合が実現すれば、これまで以上に自由な設計が可能となり、特にDIYや趣味のカスタムバイク製作での活用範囲が広がります。

検証の準備

まずは、テスト用のパーツを製作して接合のテストを行います。テストパーツは単純な板状の形状に設計し、リベット結合は実際に使えるのかを検証していきたいと思います。

3種類のリベットで検証できるように、Φ2.4mm、Φ3.2mm、Φ4.2mmのリベット用の穴をあけていきます。板厚はまずは1.5 mm とました。

リベットの詳細な仕様は以下になります。以下の表を見てもらうと分かりますが、せん断力は一番細いリベットΦ2.4mmの物でも400N(40kgf)ものせん断力があります。しかもこれは1本のせん断力のため通常4本ぐらい使用するとすると約160kgf程度のせん断力に耐えれることになりますリベットだけの強度を見れば 先に3 D プリンターの部品が壊れることは間違いないので一番小さい径の物で強度は問題ないと思います。

リベット径 (mm)穴径 (mm)適用板厚 (mm)最大引張力 (N)最大せん断力 (N)
2.42.50.5-1.5300400
3.23.31.0-2.5600800
4.24.31.5-3.010001400

リベット締結検証

準備ができたところで実際にリベットを締結してみました。締結した写真が以下のようになります。
今回は検証なので③種類のリベット径をそれぞれ締結してみました。

左:Φ4.2、中央:Φ3.2、右:Φ2.4

正面から見た感じはどれもよさそうに見えますが、よく見ると一番左のΦ4.2mmのリベットで締結したパーツが少し潰れているのがわかると思います。やはりサイズが大きくなるにつれて締結力も大きくなるため3 d プリンターで製作したパーツが耐えきれない状態となっています。

続いて側面からどのようになっているか確認してみます。まずはΦ4.2mmのリベットです。

板厚が薄いということもあるのですが、明らかにリベットの締結力に負けて反り上がっているのがわかると思います。

続いてΦ3.2mmのリベットです。

こちらは先ほどのΦ4.2mmのリベットよりはマシになりましたがそれでもやはりリベットの締結力に負けて反り上がっているのがわかります。

最後にΦ2.4mmのリベットになります。

こちらは、他のリベットと比べると反りはだいぶましになっています。この程度の反りであれば十分に使用できると思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は3 d プリンターで製作した部品を接合するにはどのような方法があるのか、またそのうちの中のリベット接続は可能なのか?を検証してみました。

結果としては小さいリベット径であれば十分に使用ができるということがわかりました。実際の使用強度などは今回は検証していませんが、次回は実際に何か組み付ける際に検証していきたいと思います。