今回は3Dプリンタの造形物に対してネジを作る方法を試していきます。
ネジを作ることで、造形の幅がとても広がります。
例えば、造形物が大きくなって、一発で製作できないサイズのものでも、分けて製作してネジで固定するといった方法をとることもできます。

PLA造形物にネジを作成する方法は大きく2つあります。

目次

1、PLA造形物に直接ネジをねじ込む

1つ目がPLA造形物に直接ネジをねじ込む方法です。
メリットとデメリットを以下に挙げてみます。

メリット

・ネジ以外の材料や工具が必要ない。
・簡単で火傷などの危険がない。

デメリット

・樹脂全般言えるが、金属のように強くなく脆いため、ネジの取り外しを繰り返すとネジ山がバカになる。
・締め付け強度が弱い。ネジを締める際にトルクをかけるとすぐにバカになってしまう。

以上の様に、メリットとデメリットがあります。
こちらの方法は工具などなくても試すことができるので、一度試してみるとよいでしょう。

使用するネジはセルフタッピングネジと言って、ねじを挿入していく際にねじ自体でねじを切っていくものになります。
造形物の穴はねじ径よりも少し小さめに穴を造形しておくことで、樹脂がねじに食い込むことによる摩擦力で固定されます。

先ほどデメリットとして挙げたように、樹脂の硬さ以上の力を加えると樹脂側が負けてしまうため、強度は高くありません。

2、PLA造形物にビットインサートを熱圧入する

次の方法は、熱圧入という方法になります。
PLA造形物にビットインサートという金属のナットの様な物をはんだこてで熱して、樹脂を溶かしてビットインサートを埋め込んでいく方法です。

こちらの方法もメリット、デメリットを以下に挙げてみました。

メリット

・金属のビットインサートを埋め込むため、強度が高い。少しくらいの締め付けトルクをかけても問題ない。
・樹脂のように取り外しをおこなっても、ネジ山がバカになったりしない。

デメリット

・はんだこて、ビットインサートといった工具や材料が必要になる。
・はんだこては300度くらいまで温度が上昇するため、火傷や火事の危険性がある。

こちらの方法は工業用製品によく使われる手法で、とても強度が高く製品の完成度もぐっとアップします。

今回はこちらの方法をメインにやり方を説明していきたいと思います。

準備するもの

必要な工具と準備するものです。

準備するもの

・はんだこて(温度調整式)
・ビットインサート(M3、M4、M5、M6)

はんだこて

はんだこてはどういうものでも良いのですが、できれば温度調整式のものがお勧めです。
やはり樹脂によって解ける温度が違うので、ある程度温度調整ができた方がやりやすいです。
あまりに高い温度で一気に溶けてしまったりすると、斜めにビットインサートが入ってしまい、失敗することもあります。

お勧めは以下のものです。
上のは、はんだごてメーカーとしては、有名で品質も安心です。
私は下の中国製のものをAmazonで安く購入しましたが、白光のものと正直違いは判りませんでした。
お金に余裕があればちゃんとしたものを購入するのがよいでしょう。

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白光(HAKKO)
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ビットインサート

ビットインサートはAmazonでも購入できます。
色々な種類のものがありますが、あまり安いものは品質が良くないのでネジを締めているときに強くトルクをかけると剥がれる事が想定されます。

なるべくなら以下のものを購入するとよいでしょう。
そこまで値段も高くないので、ここはケチらない方がよいです。品質に直結します。

以下のものであれば、ネジの種類も豊富ですし、型式を見る限り「東海物産」というちゃんとしたメーカーです。

熱圧入するための穴の設計方法

テストで熱圧入用のサンプルを造形してみました。
円柱の中央にビットインサートを熱圧入するための穴をあけました。
M4のビットインサートで外形が5.5mmなので、5.55mmの穴径にしました。

ビットインサートの穴径と穴深さ

穴径 ⇒ 外形より+0.05mm大きく造形しましょう。
穴深さ ⇒ 全長より+0.1mm大きく造形しましょう。

穴入口 ⇒ 面取り0.5mmとりましょう。

穴深さは浅すぎると、ビットインサートがはみ出てしまうので、少しだけビットインサートが面落ちになるように設計します。

また、もう一つの造形の設計ポイントとして、穴の入り口に面取りを施しましょう。
面取りをすることで、ビットインサートが熱圧入するまえに差し込みやすくなり、作業がやりやすくなります。

実際に熱圧入してみた

それでは準備ができたので、実際に熱圧入をしてみましょう。
はんだこてはとても熱くなるので、やけど、火事には十分に注意しましょう。

まずはビットインサートを造形物の穴に差し込みます。
ここは手で差し込みます。
入口の部分を面取りしているので、手で差し込みやすくなっているはずです。

次にはんだこてをビットインサートに当てて熱します。
ここで注意したいのは、以下の様にビットインサートにはんだこてを差し込むと、穴の奥にはんだこての先端が当たってしまってこれ以上差し込めない状態になります。
必要とあれば、はんだこての先端を削って短くしましょう。あまり短くしすぎると、穴径の小さい物が入らなくなってしまうので注意が必要です。

はんだこての「こて先」は交換ができるので、いずれ専用の「こて先」を設計してみようと思います。

はんだこての温度はフィラメントがPLAの場合は300度~350度くらいが熱する時間と溶け具合がよいみたいです。

しばらくすると、樹脂が溶けてビットインサートが中に入っていきます。必要以上に押しすぎるとビットインサートが埋まりすぎるので注意してください。

これくらいの状態できれいに収まります。

以上で熱圧入の記事はおしまいです。
強力なネジ穴が樹脂に造形できれば、いろんなアイディアが実現できそうです。
特に取り外しをよくするような物には必ず必要となるので、覚えておきたい技術です。

それでは!